「水虫」という言葉は俗語です。
「水虫」は、人や獣(けもの)の皮膚組織にカビが寄生している皮膚感染症を広く意味します。
カビは、正式には真菌という巨大な生物群に属するものですが、ヒトに対する病原性を持つものはごく限られています。
皮膚真菌症の種類と患者数については、日本における大規模な疫学調査の結果が報告されています(2002年)。
それによると、皮膚糸状菌症(白癬症)が89%、皮膚カンジダ症が8%、癜風(でんぷう)・マラセチア症が2%となっており、これらがいわゆる水虫と呼ばれているものになります。
興味のある方は、原著もご覧ください。
上に書きました、皮膚糸状菌症(白癬症)、皮膚カンジダ症、マラセチア症が真菌による皮膚感染症である、と法的に認められていることになります。
それぞれの皮膚感染症の原因菌は、下記のものになります。
皮膚糸状菌症:トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、エピデルモフィトン属菌
皮膚カンジダ症:カンジダ属菌
マラセチア症:マラセチア属菌
日本における皮膚糸状菌症の起因菌としては、トリコフィトン・ルブルムとトリコフィトン・メンタグロフィテスが全体の90%以上を占めるといわれています。
また、最近では格闘技の競技者の間で流行しているといわれている、トリコフィトン・トンズランスによる頭部水虫も話題になっていますね。
動物由来の皮膚糸状菌としては、犬小胞子菌(ミクロスポルム・カニス)が良く知られています。
例えば、野良猫を拾ってきて飼っていると、顔や腕に赤くて丸い小さな斑点ができることがありますが、これが動物由来の水虫です。
上記の3種類の真菌は皮膚真菌症の病原菌として指定されていますので、これらの菌は普通の実験室では取り扱いが禁じられています。
水虫の人はどこにでもいますので、これらの3種の病原菌はそこら中に散らばって落ちているのですが、そしてこれらの菌の感染力や病原性も弱いのですが、許可を得て登録した施設でないと扱えない、という変なことになっています。
そしておそらくはこの制限があるために、皮膚科医ですらこれらの菌を扱うことは容易ではなく、これらの病原菌に関する研究がとても遅れてしまっています。
最近になってカビの遺伝子解析による同定技術が進展し、上記3種類以外のカビによる皮膚真菌症が大学の研究室レベルで話題になるようになってきました。
例えば、爪真菌症(爪水虫)の原因菌として、アスペルギルス菌やフサリウム菌が報告されています。
また、私が検討している範囲内では、雑多な真菌が皮膚真菌症の原因菌となっていることが明らかになりつつあります。
現在皮膚科領域で使われている水虫薬は、上記3種類の病原菌を用いて試験・開発されたものですので、それ以外の雑多なカビが原因菌である場合には当然のことながら効きません。
水虫薬が効きにくい理由の一つが、この学問的な遅れにあるのです。
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