酢酸は塩酸や硫酸などの無機酸とは異なり、有機酸という分類の酸になります。
私の父は大正6年生まれでしたが、「中国の水虫薬はよく効く」と昔に言っていました。
有機酸の酸性はあまり強くないのですが、それでもそのカビを殺す作用を生かして水虫薬になっているものがいくつかあります。
華佗膏(かだこう)、エフゲン(大源製薬)、クエン酸をご紹介します。
華佗膏(かだこう)
華佗膏は中国で作られた水虫薬で、有効成分として安息香酸(あんそくこうさん)を10%含んでいます。
安息香酸の化学構造式を次に示しますが、ーCOOHと表示された部分が酸になります。
安息香酸は脂溶性ですので、皮膚表面から直接皮内へと吸収されるでしょう。
この化合物でもその酸性がカビ(親)を殺します。
そして、カビのタネ(胞子)に対しては効果がありません。
エフゲン
エフゲンは日本で作られた水虫薬で、有機酸の一種であるウンデシレン酸(下図)を含んでいます。
以前は薬局で販売されていましたが、現在はネット通販を行なっているようです。
この水虫薬については、私には使用経験がなく知識もありません。
クエン酸
クエン酸は酢酸と同じく民間伝承薬の一つです。
クエン酸は、ミカンの酸っぱさの元になっている酸ですね。
酸性を示すーCOOHが3つ含まれています(下図)。
「クエン酸で医者いらず」という本に、水虫薬として紹介されています(長田正松、日東書院)。
この化合物は酸性が強くて、皮膚(水虫患部)に塗ると皮膚に炎症が起きることになります。
クエン酸を水虫薬として使うことは、簡単ではないでしょう。
以上のように、現在のような水虫薬がない時代には各種の有機酸が水虫薬として使われていました。
今ではいろいろな薬剤が開発されていて、それらが水虫治療の主流になっています。
そしていろいろな水虫薬が今はあるのですが、水虫菌のタネ(胞子)を殺す薬剤はまだ開発されていないのが実情です。