前回の記事で、爪水虫の患部では爪に無数の孔があいているために、爪が持っているバリア機能がなくなっている、ということをご紹介しました。
爪患部では爪に無数の微小な孔があいており、その孔の中に菌がむき出しのままで横たわっているわけですから、爪組織への浸透性がある薬剤を使えば一撃で菌を殺せるはずです。
ご紹介する症例は、親指爪全体が爪水虫になっている例です。
処理前の爪の状態は、次の写真に示します。
処理前
爪水虫の患部では周辺の皮膚にも水虫があることが多く、この場合にも爪周囲の皮膚に水虫があることがわかります。
爪水虫では爪患部の一番奥にまで菌が入っていますので、そこまで処理液を届けてやることが先ず必要です。
このため、市販の巻指サック(Lタイプ、100円ショップで購入)に処理液を入れて、それを親指全体にかぶせて、1日間浸漬処理を継続しました。
処理時間を長くしたのは、徹底的に菌を殺したい、という目的のためです。
処理直後の爪の状態は、次の写真に示します。
処理直後
この症例では爪全体が菌に侵蝕されて無数の孔があいていましたので、そこへ液がしみ込んで爪全体がふやけた状態になっています。
爪周辺の皮膚も、液が浸透してふやけた状態になっています。
このあとも、数日に1回程度の頻度で浸漬処理を行いました。
最初の処理から半月が経過したあとの写真を次に示します。
半月後
写真からおわかりのように、爪根元からピンク色の健康な爪が伸長してきおり、もとの侵蝕された爪が爪先へと押し出されていることがわかります。
つまり、最初の浸漬処理で爪根元(爪母)の菌が死滅し、爪の新陳代謝能力が回復されて新しい爪が伸びてきたのです。
手の爪は伸びるのが早く、僅か半月でこんなにも爪が伸びるんですね。
ここまでくれば、あとはこのまま処理を続けて爪全体が新生するのを待つだけです。
この症例でおわかりいただけるように、爪水虫の患部に寄生している菌を殺すことは決して難しくはない、ということです。
そして、爪根元にいる菌を殺してしまえば、一撃で爪水虫を治せる、ということです。
この症例では処理液浸漬法を使いましたが、塗布法で爪根元の菌を殺せるように工夫すれば、液を塗るだけで爪水虫を治すことが実現します。
爪水虫を治すことの大変さは、爪組織の新生にはとにかく時間がかかる、ということです。
この間、他からの菌の感染があればたちまち爪水虫が再発しますので、何らかの処理を続けることが必要です。
今回の症例でも、爪全体がなんとかきれいな状態にまで回復したのは7ヶ月もあとのことです。
回復した爪
爪全体が菌に侵されていると、爪母にある爪製造組織の機能が回復するのにも時間がかかります。
爪水虫を治すのは、根気がいりますね。