角質増殖型水虫の症例をご紹介しています。
処理前の写真を再掲します。
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写真でおわかりのように、この症例では水虫菌に侵蝕された皮膚が足裏全体を覆っています。
この人は、20年来、皮膚科で水虫薬をもらっていたのですが、全く効かなかった、ということです。
それで、足裏全体を処理液に浸す処理液浸漬法で1日1時間処理しました。
障害された皮膚は徐々に薄れて、3ヶ月後にはきれいな皮膚を回復しました。
3ヶ月後
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ところで、この症例の皮膚症状を引き起こした病原菌(病原性真菌)は何であったのでしょうか?
これを検討するために、処理前の患部の皮膚を一部採取し、培養を行って真菌(カビ)のコロニーを分離し、大学の真菌研究室で遺伝子解析を行ってもらいました。
確定した病原菌は、「アルテルナリア(Alternaria)」というカビで、植物に寄生する病原体として知られています。
なんと、植物に寄生するカビが人の足に住み着いていて、重度の皮膚障害を起こしていたのです。
水虫を起こす病原性真菌としては、白癬菌(皮膚糸状菌)あるいはカンジダ菌が知られています。
真菌は膨大な種類の菌種が含まれているのですが、人体に対して病原性を持つものはごく僅かしかありません。
今回分離されたアルテルナリアは、人に対する病原性はありません。
それでは、この患部からなぜ植物病原体であるアルテルナリアが検出されたのでしょうか?
実は、この患部では水虫を引き起こした病原体が別に存在していたのです。
そして、長い病歴を経過するうちに、もともとは人の病原体ではないアルテルナリアが感染してしまったのです。
このような感染様式を「日和見感染」といいます。
水虫は長い病歴を経ていますので、環境中にいっぱい存在している各種の真菌(カビ)が日和見感染して、勝手に住み着いています。
水虫薬は白癬菌やカンジダ菌には効くのですが、他のカビ全部に効くというわけではありませんので、このように雑多なカビが住み着いてしまうと、水虫薬が全く効かないことになってしまいます。
水虫は治りにくいことで有名ですが、その原因の一つがここでご紹介した雑多なカビによる日和見感染が起きていることなのです。
遺伝子解析を用いてカビの種類を同定する技術は、大学の真菌研究室でようやく行われるようになってきた段階です。
皮膚科では、患部の皮膚や爪を分解してカビの菌糸があるかどうかを顕微鏡で調べるだけです。
そして菌糸が見つかれば、「水虫だ」と診断します。
今回の症例でも、皮膚科で診てもらえば、水虫ですね、といわれるだけです。
水虫道場では、水虫患部のカビを遺伝子解析して菌種を同定する作業を数多く行っています。
水虫患部の病原菌を検討することに関しては、世界の最先端を走るトップランナーなのです。
水虫を治すためには、雑多なカビが日和見感染している症状を治す能力を持つ、新たな水虫薬が必要です。
今の水虫薬では、水虫を完治させることは不可能です。