皮膚科で使われている水虫薬は、1950年代以降に開発されたものです。
それより前の年代では、酢酸(お酢)とか中国の華佗膏(かだこう、安息香酸を含む)などが水虫の症状軽減に使われていました。
現在でも酢酸を含む木酢液を水虫治療に使う人がいるようですね。
100円ショップでも木酢液が販売されています。
それでは、酢酸は本当に水虫を治せるのでしょうか?
古いところでは日本薬局方7(1961年)に次のように記載されています。
「酢酸、適用、18%液は白癬菌症に有効と言われる」、と。
これは本当の話なんですよ!
厚生省が発行している日本薬局方に、「酢酸は水虫に効く」と書かれていた時期があるのです。
また最近、岡山大学医学部の教官が、「白癬菌に対する木酢液の発育抑制・殺菌作用」という論文を発表しています。
結論としては、「足浴などの看護ケアに木酢液を応用するためには、今後より短時間の接触で効果が得られる方法の検討が必要である」と書かれています。
つまり、木酢液の効果は十分ではなかった、という結論ですね。
興味のある方は原文を見てください。
木酢液は8~9%の濃度の酢酸を含む、とされています。
この濃度の酢酸に足を浸すと皮膚が壊死し、数日後に皮膚の新陳代謝が起きて死んだ皮膚がボロボロとはがれてきます。
そして、新しい皮膚が表面へと出てきます。
このときに水虫菌(菌糸、親)も同時に死ぬのですが、水虫菌のタネ(胞子)は硬い殻で覆われていて無傷で生き残ります。
そして、タネは新しい皮膚の中で発芽する時期をひっそりと待ちます。
やがて発芽に適した時期が来れば、タネは発芽して水虫菌となり、皮膚症状が再発するのです。
水虫菌の菌糸(親)とタネ(胞子)の電顕写真を例示します。
このように、木酢液で処理すると水虫は一時的に治ったように見えるのですが、やがて再発してくることになります。
水虫とは厄介なものですね。